酸は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群の仲間です。20世紀前半にほうれん草から発見されたため「葉っぱの酸=folic acid」と名付けられ、「葉酸」という名称の由来となっています。そんな葉酸の重要性は近年、欧米から発信されることとなりました。具体的には、妊娠前の女性?妊婦が十分な量の葉酸を摂取することで「赤ちゃんの先天障害(神経管閉鎖障害)のリスクが低減できる」ということが判明したのです。2000年前後からは、厚生労働省からも国内の妊婦さんに同様の勧告をおこなっています。なお、葉酸は偏食気味の方や、お酒をよく飲む方の場合は不足することがあるようです。このような人で、なおかつ妊娠を考えている場合には、より注意して葉酸を摂取する必要があります。
■妊娠中に必要な栄養素
葉酸は、妊娠前後の女性にとって最も重要な栄養素の1つといえます。実際に、葉酸には「赤ちゃんのビタミン」という異名があるほどです。
さて、そんな葉酸をより良い状態で摂取するためには、他の栄養素もバランスよく摂取する必要があります。先ほど、葉酸がビタミンB群の仲間であることをお伝えしました。「ビタミンB群」は、それぞれ個別に摂取するよりも、まとめて摂取することで互いをサポートし合って働きます。また、葉酸を体内で働ける状態(活性型変換)にする上で「ビタミンC」が大変重要な役目を持っています。これらは、葉酸の働きを支える上で、妊娠中にもしっかりとした摂取が必要な栄養素と言えるでしょう。
■妊娠前後の女性が葉酸を摂取する重要性3つ
妊娠前後の女性が葉酸を摂取する重要性は、以下のような点になります。
■胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減!
妊娠の最低1ヵ月以上前から、充分な量の葉酸を摂取することで「神経管閉鎖障害」という胎児の先天的な障害のリスクが低減できます。神経管閉鎖障害をもって生まれた場合、生後すぐに手術が必要となることがありますが、さまざまな障害が残る可能性も高いと考えられています。中でも、無脳症の場合は流産や死産になる割合も高くなります。
■胎児の成長をサポート!
葉酸には、細胞増殖をサポートする働きがあるため、胎児の成長にとって重要です。産後の赤ちゃんは、母乳やミルクを通じて葉酸を得ます。
■妊娠中の貧血を予防!
葉酸は「造血作用」を持っており、赤血球の合成を助けます。これにより、妊娠中の貧血予防にひと役買っているのです。妊娠中に貧血が起きた場合は、鉄分とともに葉酸不足を疑う必要があります。
なお、葉酸は妊娠の1ヶ月以上前?授乳中まで、非妊娠時よりも多めに摂取する必要があります。厚生労働省が公表する「日本人の食事摂取基準2015年版」によれば、妊娠していない18歳以上の女性は、「1日240μg」の葉酸を摂取することが推奨されています。
妊娠の可能性がある女性・妊娠計画中の女性、また妊娠初期の女性は、栄養補助食品などからさらに400μgの葉酸の摂取が推奨されています。また、妊娠中期以降の女性は非妊時より+240μg、さらに授乳中の女性は、非妊娠時より+100μg多い葉酸の摂取が推奨されています。
葉酸を含む食品とサプリの比較
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■葉酸を含む食品と成分
葉酸は、動物のレバー(牛・鳥・豚)に豊富です。しかし、肉類のみならず、魚介類や野菜、果物など大変多くの食べ物の中に含まれています。以下、葉酸が豊富な食品をご紹介します。ただし、レバーを食べるとビタミンA(レチノール)過剰摂取になる可能性があり、妊婦の1日摂取量の上限を超えることがあるので、あまりお勧めしません。どうしても食べたいなら少量にしましょう。
・魚介類、海藻類
たたみいわし、桜エビ、海苔、煮干し、しらすぼしなどに葉酸が豊富です。
・野菜
ほうれん草、乾燥切干しだいこん、ブロッコリー、菜の花、パセリ、ゆでた芽キャベツ、枝豆、モロヘイヤなどに葉酸が豊富です。
・果物
ライチ、なつめ(乾燥)ほか、いちご、ラズベリー、さくらんぼ、すもも、マンゴー、アボカドなどに葉酸が豊富です。
・卵(卵黄)、チーズ(加熱殺菌されたもの)
■葉酸サプリの種類と成分
葉酸の成分は以下の2つに分けられます。
・ポリグルタミン酸:食品に含まれるそのままの葉酸
・モノグルタミン酸:サプリメントや強化食品へ配合されるために成分調整された葉酸
すでにご覧いただいたように、サプリメントに配合されている葉酸は「モノグルタミン酸」です。「成分調整されたモノグルタミン酸って、妊娠中に飲んでも大丈夫?」…そんな心配をするママもいることでしょう。しかし、食品に含まれている葉酸(ポリグルタミン酸)は、体の中でモノグルタミン酸へと変換されてから身体に吸収されるのです。したがって、成分調整されているとは言え、ママや赤ちゃんに悪影響を及ぼすことがありません。それよりも「サプリメントの原料が何なのか」を心配すべきです。以下、葉酸サプリメントの原料です。
原材料にこだわる方もいらっしゃいますが、そのまま吸収されるモノグルタミン酸か、不安定で吸収率も減るポリグルタミン酸かどうかもとても重要です。吸収率の点で、やはりモノグルタミン酸型の葉酸サプリメントでの摂取が推奨されます。
アメリカをはじめとする80か国以上の国では穀物に葉酸の添加が義務付けられています。
日本人の妊婦では必要最低限な葉酸摂取量に達している方がわずかであるというデータもあり、二分脊椎で生まれるベビーが1万人に5人程度、年間500人~600人いるそうです。海外では穀物に葉酸を添加されるようになってから随分と発生率が減っているそうですが、日本では横ばいです。妊娠前から葉酸をとっていると70~80%リスクを減らせると言われています。二分脊椎などの神経管閉鎖障害では歩行障害や排便・排尿障害などが生じることがありますし、死産になることもあるので、なるべく予防したいですね。
なお、葉酸だけ摂っていても細胞はつくられません。ビタミンB12をはじめとしたビタミンB群やマグネシウムなども一緒に働くので、ビタミン・ミネラルも一緒にとりましょう。たんぱく質も不足していると細胞をつくることができないので、葉酸だけでなくしっかりと十分な食事をとりましょう。
安心して葉酸を摂取する為に
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■サプリをすすめる理由
妊娠前後の女性に葉酸サプリメントをおすすめする理由は以下の3つです。
①厚生労働省がすすめているから
妊娠前の女性は1日に440μgの葉酸を摂取する必要があります。これは、通常の2倍以上の量です。食事だけで摂取することがなかなか難しいと言う事情もあり、厚生労働省では「サプリメントや強化食品の形で葉酸を摂取すること」を推奨しています。
②妊娠中の摂取量が2倍になるから
妊娠中の葉酸摂取量は、1日に480μgですが、非妊娠時の2倍です。つわりで、満足な食事の用意ができないこともありますから、やはり葉酸サプリメントを常備しておくことが安心といえます。
③「生体利用効率」が良いから
食品に含まれるそのままの葉酸(ポリグルタミン酸)は、体の中に摂り入れられても半分以下しか利用されません。しかし、サプリメントで「モノグルタミン酸」を摂れば、なんと85%も利用されるのです。つまり、サプリメントでの葉酸摂取の方が「生体利用効率が良い」わけですね。おまけに妊娠中のつわりや食欲不振の時でも、水で簡単に飲むことができます。
■サプリ摂取の注意点
葉酸サプリメントの飲み過ぎにご注意ください。1日に1,000μg以上の葉酸を摂取すると、神経障害や皮膚炎、じんましん、熱といった悪影響が出てくると考えられています。
まとめ
妊娠前後の女性にとって、最も大切な栄養素の1つ「葉酸」。妊娠前後の女性は、通常の何倍もの葉酸を摂取しなければなりませんが、食事だけで摂ろうとすると大変です。つわりや胃痛、食欲不振できちんとご飯が食べられない日もあることでしょう。そんな時にも、葉酸サプリメントは大変心強い味方です。妊娠前後の葉酸不足は、ママと赤ちゃんに重大な悪影響及ぼす危険性もありますので、ぜひとも良質な葉酸サプリメントを常備してください。